土からひょっこり顔を出した双葉に乗る水滴が、覗き込むわたしの顔を映し出していた
その表情はいかにもアホ面で
なぜかというと、道端にしゃがみこんで恥ずかしげもなく泣いていたから
本当は、昨晩読んだ小説の続きとか
そういえばお風呂の窓を開けたっけ
なんだか気にしないといけないことがあるんだけど
まだ続いてゆく日常に適応しないと
こんなところで泣きべそをかいたって、ね。
鞄につけていたお気に入りのキーホルダーまで失くしてしまって、こんなのひどいよ、こんなの
追い詰められた気がして、精一杯何か運んでいるアリんこたちにまで八つ当たりを始めてしまいました
わたしが八方塞がりなことをアリんこに押しつけるように、彼らの道を塞いでやりました
これが大きな壁なんだぞ
それは落ち込んだ1人の人間のただの気まぐれで
かわいそうな、わたし。
かわいそうに、アリ。
どうかこんなちっぽけなわたしに
どうかどうか、傘をさしてくれる人はいないでしょうか
どうかまた続いてゆく日々に
どうかどうか、ありきたりな言葉でしか言い表せないような些細な希望を運んできてくれる、そんな無責任なキリギリスはいるのでしょうか
立ち上がったら少し膝がみしっと鳴って
もう進んでゆくアリんこの何匹目を見たのか
読みかけの小説の続きの一節を思い出して
そうして気がついた頃に、美しく整った葉の先から
またそれは綺麗に美しく、滴がこぼれました