中原ぬこさん

言葉で遊びましょう

何も言わない子

 

この世で一番難しくて厄介でどうしようもないものは親子関係である。縁を切ればいいなんてことを言う輩がいたりするが、そんなのは正気の沙汰ではない。虐待やネグレクトのない一般的な家庭で育った、少なくともわたしからすれば、当たり前に返すべき恩やすべき感謝や生涯を全うする責任などがある、ように思う。

勘当なんてできるわけがない。

 

通っていた塾の恩師に、親と対立するならば説得をする義務があると教えられた。なんとなく、「たしかにそうだ」と思った。説得とは、意見を説いてお互いが納得いくのがゴールだ。
だけど、結局話し合いなど一度たりともしたことはないと言っても過言じゃない。

精神科に初めて行った時でさえ、「どうだった?」と親に言われても特に何も詳しくは言わなかった。

何も言いたくなどない。

言ったところで分からないだろとさえ思う。

諦めているんだと思う。

もしくは、ダメな子どもでごめんなさいと罪悪感を抱いているから、何も言えないんだとも思う。

しばらくは、通院から帰ったあと「病院どうだった?」と親に言われていたけれど、いつも「特に何も無いよ」と言うわたしに、さすがにもうわたしが何か言うことに期待しなくなったのか何も聞かれなくなった。それでいいんだけど。


わたしは今の今まで、親にどうしてほしいか伝えたことがない。本音を隠すように過ごしてきたから、何も言わないし言えない癖がついた。本当になんにも言わない。

言わないことが美徳だと教えられてきた、あるいは自分の勝手な解釈でそう信じ込んできたように思う。

要は「いい子」でいなきゃいけないと、無意識にだけどそういう風に自分に言い聞かせてきた。


本当は、「何も言わない子」が「いい子」なわけがないとわかってはいる。反抗期に拗らせすぎた。たぶんこの先も何も話し合いなんてしないんだろうなと思う。そこに関しては、かなり絶望はしています、もちろん自分が悪いんだろうけど。