中原ぬこさん

言葉で遊びましょう

透明マント

 

わたしは未来の自分に殺されているのかもしれない

この先に当たり前に続いていく人生できっと培ってゆくであろう分の憂いを前借りして
それと共に人よりもいま苦しんで苦しんで
そうやって人より短い年数を生きて死んでゆくのかもしれない
凝縮された長さの道を歩き、密度の濃い感情で
もしかしたら人よりも濃い時間を過ごして少しばかり多くの経験をして
またもしかしたら時間と健康を無駄遣いして
有限の時間の中、さらに限りを尽くしながら
わけもわからずいつの間にか死んでゆくのかもしれない


わたしの目に入る世界はみんなと同じだろうか
利用している電車の吊革の数はみんなと同じだろうか
大学へ行く道のりの坂道はみんなと同じ傾斜だろうか
座っている教室の席の隙間は同じくらいだろうか
スマホの文字は同じ濃さだろうか
血液の色は同じだろうか
想像する未来は同じだろうか
生きてきた過去は同じようにあるだろうか
同じような景色を見ているのだろうか
だったらわたしとみんなの違いは何だろう
どこから違っていただろう
わたしは自分が正しいと思っているし、みんなも自分のことを正しく感じているだろうのに、なぜ同じような、少なくとも消えてしまいたいだなんて思わないような、そんな正しい風に生きられるのだろうか


わたしだって悲しくて虚しくて苦しくてつらくて枕を濡らしてばかりの寂しい夜を過ごしたくなんて決してないのに
どうしてだろうか