その人にかけた電話が最期になるかもしれないと思ったら、相手のことを不憫だと思った
悲しいかもしれない
責め立てられるかもしれない
あなたが何か良くないことを言ったから、だからわたしは死んでしまったんじゃないかと原因を追求されるかもしれない
そんなことはわたしの本意では決してないのに
そしてまた相手もまさかそんなつもりの電話じゃないのに
何が原因かだなんて言われたって明確に決まってるわけがないじゃないか
「あれが悪い」「これが良くない」
そんな単純明快な理由なんてない
ただ漠然とわたしの中にある理由を、言葉で綺麗に丁寧に説明できるはずもないし、またそれもしたくない
わからないまま死んでしまっていいと思っている
わからない方が、憎たらしいでしょう
わからない方が、わかろうと滑稽に必死になるでしょう
その行為で報われることに、どうして気が付かない
気がついてほしくないからかもしれない
気がついてほしいから死のうとして生き延びてしまうのかもしれない
いいよ、わかんなくて、ほんとうに
スマートフォンを、ぶん投げた
画面がバキバキに割れた
そういう小さなことに一つずつ気づいてみてほしい
そうしてわかることを繋いでいったら、わかりたいことのほんの些細なことにまた気づけると思う
かけた電話が繋がらない