中原ぬこさん

言葉で遊びましょう

絶対温度

 

蝉が外で鳴いている日差しの強い夏の日に
扇風機の風で前髪をなびかせながら
溶けかけたアイスが垂れ落ちないように上手に食べているわたしの目線は、切り取られた時間が映し出されている液晶に、なんともなしに向いていた
タンクトップが汗を吸ってくれていることとか
コップに注がれた麦茶の氷が溶けてカランと音を立てたこととか
母親がお昼のそうめんを台所で用意していることとか
一切の生活音もまた、わたしから切り取られた夏の日のワンシーン


風もアイスも冷えた麦茶もそうめんも
わたしの身体をキンキンにしちゃうんだから
庭の草が照り返す光とできるカゲロウが丁度よく心地良い
こういう気持ちの良い日には、宿題もおつかいも放り出して
温度のない液晶の向こう側をぼーっと見ながら
気づいたら蝉が鳴き止む時分に、現実に戻れればいいんだって
昨日路地裏で出逢ったミケの野良猫も気怠そうに
そう言ってた

 

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詩論の授業中に書いた文章です。

わたしはよく現実から切り離された感覚に陥ることがある(離人感)ので。

余計なことは書かないでおきます。